クォータニオンの幾何学的意味を理解するためには,「クォータニオン1:複素数とオイラーの公式」「クォータニオン2:オイラーの公式からロドリゲスの式へ」「クォータニオン3:ロドリゲスの式からクォータニオンへ」もご覧ください.

クォータニオンとは


四元数を記念し橋にかかげられたプレート(Wikipediaより)


 クォータニオン(quaternion)は四元数(しげんすう)とも呼ばれる,アイルランドの数学者ハミルトンが1843年に考案されました.現在ウィリアム・ローアン・ハミルトン橋と呼ばれている橋を歩いているときに,ひらめき,そのアイデア(下記の式)を橋にナイフで刻んだと伝えられています.

 クォータニオンは複素数を拡張したもので,i^2=j^2=k^2=ijk=-1 という関係を満たします.もともと,2次元(平面)の回転を表すのに,複素数は都合が良く数学のオイラーの公式は有名です.クォータニオンは,それを3次元空間に拡張したものなのです.そして

   q = s + i u + j v + k w

のようなs, u, v, wの4変数(実数)で定義されたqをクォータニオンと呼びます.

さらに

  s^2 + u^2 + v^2 + w^2 = 1

という特別な関係をクォータニオンを持たせて,3次元の姿勢角度を表現することができ,これをオイラーパラメータ(Euler parmeters)と呼びます.オイラーパラメータは単位四元数(単位クォータニオン)とも呼ばれます.一般に「クォータニオン=3次元姿勢角度,回転」のように考えていらっしゃる方が多いのですが,正規化された上記の関係を満たす特別なクォータニオン(=オイラーパラメータ,単位クォータニオン)によってのみ,回転を表現できることにご注意ください.以下に,簡単にその特別なクォータニオン,すなわちオイラーパラメータによる3次元の姿勢角度表現について解説していきます.

なお,オイラー角と比較して,クォータニオンによる姿勢表現は線形計算が成り立つ,幾何学的に直感的,特異的の回避などの多くの利点があります.ここでは,それらを網羅することはできませんが,多くの場面でクォータニオンを使用することを推奨いたします.

オイラーパラメータ

ここで,クォータニオンと区別し,オイラーパラメータsを新たに定義します.



クォータニオンと同じように,このようにオイラーパラメータは4つの変数で定義されます.ここでe0は回転角度ψで表された,回転角度に関するパラメータで,e=[e1,e2,e3]^T=n sin (ψ/2)は,軸の方向を示すパラメータである.さらに,これらは

  e0^2 + e1^2 + e2^2 + e3^2 = 1

という大きさに関する拘束式を満たします.

 すると,オイラーパラメータで記述したロドリゲスの式



のように書き表すことができます.ここでTはベクトルの転置を表していますので,eTeはベクトルの内積を意味しています.e eTは3×3の行列になりますので,注意してください.Eは3次の単位行列です.また,ここで述べる回転は,時間変化しない平均的な回転運動を表しています.

逆変換

 ここでは,行列Rが既知の時に,オイラーパラメータを算出する方法(逆変換)について考える.行列Rの成分が



のように表されるとき,回転角度に関係するパラメータe0と,回転軸に関係するパラメータek = e1, e2, e3 (k=1,2,3)は,下記のような関係を満たします.



ここでtrは行列のトレースで行列Rの対角要素の和 trR=r11+r22+r33です.この式と最初のオイラーパラメータの定義から,回転角度ψは



から計算できます.ここで回転は回転軸の向きnと角度ψで表されるため,同じ回転を2つの軸で表現でき,角度の符号は正負のどちらを選択しても構いませんが,それにともない,回転軸nの向きが定まります.ここでは,以下の計算も含めて,ψの符号として正を選択することにします.



ここで,sgn()は括弧の中の値で決定される符号関数で,1か−1か0の値を返します.

note記事

単位クォータニオンについてはnote記事「モーションにおける3次元回転」もご参照ください.

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